親が亡くなったら、実家の片付けや名義変更、売却など、さまざまな対応が必要になります。しかし、葬儀や行政手続きに追われるなかで、「実家をどうするかまで考えられない」という方も少なくありません。
実家の扱いは、すぐに決めなくても構いません。ただし、相続放棄や税金の申告、相続登記には期限があるため、何もしないまま長期間放置するのは避けたいところです。
この記事では、親の死亡後に実家をどうするか悩んでいる方に向けて、相続後の選択肢と手続きの順番、片付けや売却を進める際の注意点を解説します。

この記事で分かること
- 親が亡くなった直後に実家で確認すること
- 実家を相続した後の主な選択肢
- 遺言確認から相続登記までの流れ
- 相続放棄や税金に関する主な期限
- 実家の片付けや不動産査定を始めるタイミング
親が亡くなったら、まず実家で確認すること
親の死亡後、実家を売るか残すかを急いで決める必要はありません。最初は、建物と財産を安全に保つための確認から始めます。
戸締まりと建物の状態を確認する
親が一人暮らしだった場合は、玄関や窓の施錠、スペアキーの所在を確認します。冷蔵庫の食品、生ごみ、水漏れ、電気機器のつけっぱなしなども早めに点検しましょう。
郵便物がたまると留守であることが分かりやすくなるため、郵便物の管理も必要です。庭木や雨漏りなど、近隣に影響しそうな問題がないかも確認してください。
重要書類や貴重品を探す
実家にある書類は、相続財産を調べる手がかりになります。少なくとも、次のものがないか確認します。
- 遺言書
- 固定資産税の納税通知書
- 不動産の登記関係書類
- 預貯金通帳や証券会社からの書類
- 生命保険や損害保険の証券
- 住宅ローンや借入金に関する書類
- 権利証または登記識別情報
- 印鑑、現金、貴金属などの貴重品
見つけた書類や貴重品は、勝手に処分せず、保管場所と内容を相続人の間で共有しておくとトラブルを防ぎやすくなります。室内の写真を撮り、持ち出したものを記録しておく方法も有効です。
電気・水道・保険をすぐに解約しない
誰も住まない実家でも、片付けや清掃には電気と水道を使います。凍結防止や換気などのために必要になる場合もあるため、一律にすべて解約するのではなく、今後の作業を考えて判断しましょう。
火災保険についても、名義人が亡くなったからといって直ちに解約するのは避け、保険会社へ連絡して補償の継続や名義変更について確認してください。空き家になると契約条件が変わる可能性があります。
実家を相続した後の5つの選択肢
相続した実家の主な選択肢は、「住む」「売る」「貸す」「空き家として保有する」「解体して土地を活用・売却する」の5つです。それぞれの利点だけでなく、費用や手間も比べて決めます。
1.相続人や家族が住む
相続人本人やその家族が住む方法です。思い入れのある実家を残せる一方、勤務先や学校からの距離、修繕費、固定資産税などを考える必要があります。
複数の相続人がいる場合は、住む人が実家を取得する代わりに、ほかの相続人へどのように財産を分けるかも話し合います。
2.実家を売却する
今後誰も住まない場合は、実家を売却して現金で分ける方法があります。管理や固定資産税の負担を減らしやすく、相続人間で財産を分けやすいことが特徴です。
売却を検討するなら、遺産分割の結論を出す前に不動産会社へ査定を依頼し、おおよその市場価格を把握しておくと話し合いがしやすくなります。ただし、査定額は実際に売れる価格を保証するものではありません。複数社の査定内容や売却方法を比較すると安心です。
3.賃貸物件として貸す
立地や建物の状態によっては、実家を貸して家賃収入を得る方法もあります。ただし、修繕、入居者募集、契約、設備の故障対応などが必要です。
古い建物は、貸し出す前にまとまった修繕費がかかることもあります。想定家賃だけで決めず、初期費用や管理費、空室期間を含めて収支を確認しましょう。
4.空き家のまま保有する
気持ちの整理がつかない場合や、将来住む可能性がある場合は、いったん空き家として保有する選択もあります。
ただし、空き家でも固定資産税、保険料、庭木の手入れ、換気、修繕などの負担は続きます。建物が傷み、売却や活用が難しくなる可能性もあるため、「半年後に家族で再検討する」など、見直す時期を決めておくことが大切です。
5.建物を解体して土地を売る・活用する
建物の老朽化が進んでいる場合は、解体して土地として売却したり、駐車場などに活用したりする方法があります。
ただし、解体には費用がかかり、更地にすると土地にかかる固定資産税の扱いが変わる場合があります。解体後のほうが必ず売りやすいとは限らないため、先に不動産会社へ相談し、古家付きで売る場合と比較してください。
親の死亡後、実家を相続する手続きの流れ
1.遺言書の有無を確認する
まず、親が遺言書を残していないか確認します。自宅で見つかった自筆の遺言書は、家庭裁判所で「検認」という確認手続きが必要になることがあります。勝手に開封せず、専門家や家庭裁判所へ確認してください。
公正証書遺言や、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、通常、検認が不要です。遺言書の種類が分からない場合は、司法書士や弁護士へ相談するとよいでしょう。
2.相続人を確定する
親の出生から死亡までの戸籍などを集め、相続人を確認します。家族が把握していなかった相続人が見つかることもあるため、思い込みだけで遺産分割を進めないことが重要です。
3.実家を含む財産と借金を調べる
実家だけでなく、預貯金、株式、生命保険、車、貴金属などの財産を確認します。同時に、住宅ローン、カードローン、未払い金、連帯保証などの負債も調べなければなりません。
実家の価値を把握するには、固定資産税の書類だけでなく、不動産会社の査定も参考になります。固定資産税評価額と実際の売却価格は同じではありません。
4.相続するか相続放棄するか判断する
借金が多い場合や、管理が難しい不動産がある場合は、相続放棄も選択肢になります。ただし、相続放棄は「実家だけを放棄する」制度ではありません。原則として、預貯金などを含む相続財産全体を受け継がない手続きです。
また、相続財産を売却・処分すると、相続を承認したと扱われる可能性があります。放棄を検討している間は、実家の家財を安易に捨てたり、形見を持ち帰ったりせず、弁護士などへ相談してください。
5.相続人全員で遺産分割を話し合う
遺言書がない場合などは、相続人全員で誰が実家を取得するか話し合います。合意した内容は、遺産分割協議書にまとめるのが一般的です。
実家を複数人の共有名義にすると、将来の売却や大規模修繕で意見調整が必要になります。共有が適切な場合もありますが、「とりあえず全員の名義にする」と決めず、将来の管理まで考えて判断しましょう。
6.実家の相続登記をする
実家を取得する人が決まったら、法務局で相続登記を行い、登記上の名義を親から相続人へ変更します。売却する場合も、通常は先に相続登記が必要です。
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請が必要です。遺産分割がまとまらない場合に利用できる手続きもあるため、期限が近いときは司法書士や法務局へ早めに確認してください。
実家の相続で注意したい主な期限
親の死亡後には、実家の処分を決める期限とは別に、法律や税金に関する期限があります。代表的なものは次のとおりです。
- 死亡届:原則として死亡の事実を知った日から7日以内
- 相続放棄:原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内
- 準確定申告:必要な場合は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
- 相続税の申告・納付:必要な場合は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内
- 相続登記:原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内
相続放棄の検討期間は、事情によって家庭裁判所へ伸長を申し立てられる場合があります。また、相続税はすべての相続で発生するわけではありません。期限の起算点や必要な手続きは状況によって異なるため、税務署、法務局、税理士、司法書士、弁護士などへ確認しましょう。
実家の片付けは相続人の合意後に進める
実家の片付けでは、家財のなかに遺言書、通帳、権利関係の書類、現金などが紛れていることがあります。価値が分からないものもあるため、最初から一気に処分するのはおすすめできません。
まず「残すもの」「形見として分けるもの」「売却するもの」「処分するもの」「判断を保留するもの」に分類します。誰が何を取得したか記録し、相続人全員の認識を合わせながら進めてください。
家財が多い、遠方で作業できない、退去や売却を急いでいるといった場合は、遺品整理業者への依頼も選択肢です。複数社から見積もりを取り、作業範囲、追加料金、買取品の扱い、廃棄物の処理方法を確認しましょう。
実家を売却するなら査定は早めに受ける
売却すると決めていなくても、不動産査定を受けることで実家のおおよその市場価値が分かります。価格の目安があれば、相続人の一人が取得する場合の話し合いや、保有を続ける場合との比較にも役立ちます。
査定を依頼するときは、建物の状態、土地の境界、接道状況、残置物の量なども確認してもらいましょう。「家財を残したまま売れるか」「解体せずに売る方法があるか」も相談できます。
相続した空き家を売った場合、一定の条件を満たすと税負担を軽減できる特例が使える可能性もあります。適用条件や期限は改正されることがあるため、売却前に税理士や税務署へ最新情報を確認してください。
判断できないときは「管理」と「調査」を先に進める
親を亡くした直後は、実家への思い入れもあり、売却や処分を冷静に決められないことがあります。無理に結論を急ぐ必要はありません。
結論が出ない間は、戸締まり、換気、郵便物の回収、庭木の手入れなどを続けながら、相続人、財産、建物の状態、市場価格を調べます。期限のある手続きだけ先に進め、家族で再検討する時期を決めておくと、放置を防げます。
実家じまい全体の進め方や費用、片付けについては、実家じまいとは?何から始める?費用・手順・片付け・売却まで解説も参考にしてください。
まとめ
親が亡くなった後の実家には、住む、売る、貸す、空き家として保有する、解体して土地を活用するという選択肢があります。どの方法が適しているかは、家族の希望、建物の状態、立地、維持費、相続財産の内容によって異なります。
まずは実家を安全に管理し、遺言書、相続人、財産と借金を確認してください。その後、相続人全員で話し合い、相続登記や片付け、売却などを進めます。
特に相続放棄、相続税の申告、相続登記には期限があります。実家の価格が分からなければ不動産査定を利用し、家財の整理が難しければ遺品整理業者へ見積もりを依頼するなど、必要に応じて専門家の力を借りましょう。
親が亡くなった後の実家に関するFAQ
- Q親が亡くなったら実家をすぐに売らなければなりませんか?
- A
すぐに売る必要はありません。ただし、空き家の管理費や固定資産税は続き、建物の劣化も進みます。期限のある相続手続きを確認したうえで、いつまでに方針を決めるか家族で予定を立てましょう。
- Q実家の名義が亡くなった親のままでも売却できますか?
- A
通常は、相続人への相続登記を済ませてから売却します。買主への名義変更とあわせて手続きを進める場合もありますが、遺産分割や必要書類の準備が必要です。売却を急ぐ場合は、不動産会社と司法書士へ早めに相談してください。
- Q兄弟の一人が実家の売却に反対している場合はどうしますか?
- A
実家が共有状態にある場合、全体の売却には原則として共有者全員の合意が必要です。売却価格や維持費、誰かが取得する案などを具体的に示して話し合います。合意が難しい場合は、弁護士への相談や家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。
- Q実家の遺品はいつから処分できますか?
- A
遺言書と相続人、財産の内容を確認し、原則として相続人の合意を得てから処分します。相続放棄を検討している場合は、財産の処分が相続の承認と判断される可能性があるため、先に専門家へ相談してください。
- Q実家を相続すると必ず相続税がかかりますか?
- A
実家を相続しただけで、必ず相続税が発生するわけではありません。実家だけでなく、預貯金などを含む相続財産全体や利用できる控除・特例によって判断されます。申告の要否が分からない場合は、税理士または税務署へ確認してください。



