相続した実家を売るとき、「税金を引いたら、手元にいくら残るのだろう」と不安になる方は少なくありません。
実家の売却で中心となるのは、売却益にかかる所得税・住民税です。売却価格そのものに税率をかけるわけではありません。親が実家を購入したときの金額や売却にかかった費用を差し引き、利益が出た場合に課税されます。
一方で、古い実家は購入時の契約書が見つからず、取得費が分からないこともあります。利用できる特例によって税額が大きく変わる場合もあるため、売却前に計算の仕組みを知っておくと安心です。

この記事は次のような人におすすめ!
- 実家を売ったときにかかる税金の種類
- 譲渡所得と売却後の手取りを計算する方法
- 取得費が分からない場合の扱いと利用できる特例
実家の売却価格すべてに税金がかかるわけではない
実家を売ったときの税金は、売却価格ではなく、売却によって生じた利益をもとに計算します。この利益が「譲渡所得」です。
譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除
取得費は、親が実家を買ったときの代金などです。譲渡費用は、今回の売却に直接かかった仲介手数料などを指します。一定の要件を満たせば、そこから特別控除を差し引けることもあります。
計算結果がゼロまたはマイナスなら、原則として譲渡所得に対する所得税と住民税はかかりません。ただし、特例を使って税額がゼロになる場合は、確定申告が必要です。
実家を売るときに関係する主な税金
売却益にかかる所得税・住民税
譲渡所得がプラスになった場合、その金額に所得税と住民税がかかります。給与などの所得とは分けて計算する「分離課税」です。
所得税には、復興特別所得税も加算されます。復興特別所得税は、所得税額の2.1%です。
売買契約書の印紙税
紙の不動産売買契約書を作成すると、契約金額に応じた印紙税がかかります。通常は、契約書に収入印紙を貼って納めます。
仲介手数料や片付け費用と比べれば小さいこともありますが、売却時の支出として資金計画に入れておきましょう。
登記手続きにかかる登録免許税
実家に住宅ローンの抵当権が残っている場合は、売却に合わせて抵当権を抹消します。登記上の住所や氏名が現在の内容と異なる場合も、変更登記が必要になることがあります。
相続登記が終わっていない実家は、そのままでは買主へ所有権を移せません。相続登記の登録免許税や司法書士への報酬も、売却前に確認しておきたい費用です。
譲渡所得の計算で差し引ける取得費
取得費には、親が実家を購入したときの土地・建物代金や、購入時の仲介手数料などが含まれます。相続した人が、相続時の時価を取得費として使うわけではありません。
相続した実家では、原則として亡くなった親などが購入したときの取得費を引き継ぎます。贈与で取得した場合も、基本的には贈与した人の取得費を引き継ぐ考え方です。
- 土地と建物の購入代金
- 購入時に支払った仲介手数料
- 購入時の契約書に貼った収入印紙代
- 購入時の登記費用や不動産取得税のうち、取得費に含められるもの
- 土地の造成費用や一定の改良費
建物の取得費は、購入代金をそのまま使えるとは限りません。所有していた間の価値の減少分にあたる「減価償却費相当額」を差し引いて計算します。土地は時間の経過による減価償却をしません。
取得費が分からない場合は売却価格の5%で計算できる
親が購入したときの契約書などが見つからず、実際の取得費が分からない場合は、売却価格の5%を「概算取得費」として計算できます。実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合も、概算取得費を選べます。
ただし、取得費が売却価格の5%になると、譲渡所得が大きくなりやすく、税金も増えます。古い実家だから仕方がないとすぐに諦めず、次のような資料を探してみましょう。
- 購入時の不動産売買契約書
- 建築工事の請負契約書や領収書
- 購入当時の通帳や振込記録
- 住宅ローンの契約書や返済予定表
- 不動産会社や施工会社から受け取った書類
資料が一部しか残っていない場合は、取得費をどこまで証明できるか、税務署や税理士に確認する方法もあります。
売却のために支払った譲渡費用
譲渡費用とは、実家を売るために直接かかった費用です。代表的なものは次のとおりです。
- 不動産会社に支払った仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 売却のために必要となった測量費
- 土地を売るために建物を取り壊した場合の解体費
- 売却に伴って借家人へ支払った立退料
家具や家電の処分費、遺品整理費、固定資産税、実家の維持管理費などは、支払ったものがすべて譲渡費用になるわけではありません。売却に直接必要だった支出かどうかで扱いが変わります。
片付けから売却までの流れを整理したい方は、実家じまいの費用・手順・片付け・売却の進め方もご覧ください。
税率は実家の所有期間で変わる
譲渡所得にかかる税率は、実家を所有していた期間によって異なります。判定日は売却日ではなく、売却した年の1月1日です。
- 長期譲渡所得:所有期間が5年を超える場合。所得税15%、住民税5%、復興特別所得税を含む合計税率は20.315%
- 短期譲渡所得:所有期間が5年以下の場合。所得税30%、住民税9%、復興特別所得税を含む合計税率は39.63%
相続した実家では、亡くなった親などが取得した時期を引き継ぎます。相続してから1年で売ったとしても、親が長年所有していた家なら、長期譲渡所得になる可能性があります。
登記事項証明書に記載された相続日から数えるわけではないため、購入時の契約書などで取得時期を確認してください。
実家売却の税金を計算する具体例
以下の条件で、相続した実家を売却したとします。
- 売却価格:3,000万円
- 取得費:800万円
- 仲介手数料などの譲渡費用:100万円
- 特別控除:なし
- 所有期間:長期譲渡所得に該当
譲渡所得は「3,000万円-800万円-100万円=2,100万円」です。
長期譲渡所得の合計税率20.315%を使うと、税額の概算は「2,100万円×20.315%=426万6,150円」となります。実際の申告では、税額計算上の端数処理などにより金額が変わることがあります。
この例での売却後の手取りは、単純計算で約2,473万円です。
3,000万円-譲渡費用100万円-税金426万6,150円=手取り約2,473万円
取得費は過去に支払った購入代金なので、現在の売却代金からもう一度差し引く支出ではありません。住宅ローンの残高や片付け費、相続登記費用などがあれば、実際の手取りはさらに少なくなります。
取得費が分からず、売却価格の5%にあたる150万円を概算取得費とした場合、譲渡所得は2,750万円です。長期譲渡所得の税額は、概算で約559万円まで増えます。購入時の資料の有無が、税額に大きく影響する例です。
相続した実家で検討したい税金の特例
相続した空き家の3,000万円特別控除
亡くなった人が一人で暮らしていた家を相続し、一定の期限内に売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。一般に「相続空き家の3,000万円特別控除」と呼ばれる制度です。
主な要件には、1981年5月31日以前に建築された家であること、区分所有建物ではないこと、売却価格が1億円以下であることなどがあります。相続してから売却するまで、居住や賃貸などに使っていないことも確認されます。
建物を残して売る場合は、一定の耐震基準を満たすことが求められます。建物を取り壊して土地として売る方法もあります。売却後に買主が耐震工事や取り壊しを行う場合の取り扱いもありますが、工事の期限など細かな条件があります。
老人ホームなどへ入居していた親の実家でも、一定の要件を満たせば対象になる可能性があります。また、相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除上限が2,000万円になるケースがあります。
対象になるかどうかは、建築年月日や相続後の利用状況、売却日によって変わります。売却や解体を決める前に、税務署などに要件を確認しておくと安心です。
自分が住んでいた実家の3,000万円特別控除
相続後に自分が実家で暮らしていた場合など、売主自身のマイホームとして認められれば、別の3,000万円特別控除を使えることがあります。
住民票だけを移せば適用される制度ではありません。実際の生活状況や住まなくなってからの期間、親族間の売買ではないことなど、複数の条件があります。
相続税の一部を取得費に加算できる特例
実家の相続時に相続税を支払った人は、その相続税のうち一定額を取得費へ加算できる場合があります。取得費が増えるため、課税対象となる譲渡所得を減らせます。
対象となる売却期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。一般には、相続開始から約3年10か月以内が目安になります。
相続空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。どちらが有利かは取得費や相続税額によって変わるため、両方を試算して選ぶことになります。
売却後の手取りは税金以外の費用も含めて考える
実家を売ったあとに残る金額は、次の式で考えると整理しやすくなります。
手取り額=売却価格-売却時の諸費用-譲渡所得にかかる税金-住宅ローン残高など
- 不動産会社の仲介手数料
- 測量費や解体費
- 家財の片付け費用
- 相続登記や抵当権抹消などの費用
- 住宅ローンの残高
- 譲渡所得にかかる所得税・住民税
売却価格が同じでも、仲介による売却と、不動産会社が直接買い取る不動産買取では、手取りや売却までの期間が変わります。複数の不動産会社から査定を取り、税金と費用を引いた金額で比較すると判断しやすくなります。
相談先を探している方は、実家を売るならどこに相談?不動産売却・買取サービス6選を比較も確認してみてください。
実家の売却で確定申告が必要になるケース
実家の売却で譲渡所得が出た場合は、売却した年の翌年に確定申告をします。通常の申告期間は2月16日から3月15日までですが、土日祝日の関係で期限が変わる年があります。
3,000万円特別控除などを使って税額がゼロになる場合も、特例を受けるための確定申告が必要です。
申告に備えて、次の書類を保管しておきましょう。
- 実家を売ったときの売買契約書
- 親などが実家を購入したときの売買契約書
- 仲介手数料、測量費、解体費などの領収書
- 相続や所有関係を確認できる書類
- 利用する特例の要件を証明する書類
共有している実家を売った場合は、共有者ごとに持分に応じた譲渡所得を計算します。確定申告も原則として各共有者が行います。
実家売却の税金に関するよくある質問
- Q売却代金を相続人で分ければ税金も均等になりますか?
- A
税金は、登記上の持分や実際の売却内容をもとに、それぞれの譲渡所得を計算します。売却後に代金だけを均等に分けると、持分によっては贈与と判断される可能性もあります。売却前に、誰がどの持分を相続しているか確認してください。
- Q住宅ローンが残っていると譲渡所得を減らせますか?
- A
住宅ローンの残高は、譲渡所得の計算では差し引けません。ただし、売却代金からローンを返済するため、実際の手取り額は減ります。
- Q売却で損が出た場合も確定申告は必要ですか?
- A
譲渡所得がマイナスで、利用する特例もなければ、売却だけを理由とした確定申告は通常必要ありません。不動産の売却損は、原則として給与所得などから自由に差し引くこともできません。ただし、自分のマイホームを売った場合には損失に関する特例があるため、該当しそうなときは確認しましょう。
- Q税金はいつ支払いますか?
- A
所得税と復興特別所得税は、原則として確定申告の期限までに納めます。住民税は確定申告の内容をもとに計算され、通常はその年の6月以降に納付します。売却代金を使う前に、納税分を分けて確保しておくと安心です。
- Q実家を解体してから売ると税金は安くなりますか?
- A
売却のために行った解体費は、譲渡費用として差し引ける可能性があります。一方で、建物を取り壊すと住宅用地に対する固定資産税の軽減が外れる場合があります。相続空き家の特例にも関係するため、解体時期は売却計画と合わせて決めることが大切です。
まとめ|取得費と特例を確認して手取りを試算しよう
実家売却の税金は、売却価格ではなく、取得費や譲渡費用を差し引いた利益に対してかかります。相続した実家では親などの取得費と所有期間を引き継ぐため、購入当時の契約書を探すことが大切です。
売却前には、査定価格だけでなく、取得費、売却費用、使えそうな特例、住宅ローン残高を整理してみてください。そのうえで税金を概算すると、売却後に残る金額を把握しやすくなります。
税制や特例の適用条件は変更されることがあります。実際に申告するときは最新の要件を確認し、判断が難しい部分は税務署や税理士に相談するとよいでしょう。




