「一人っ子だから、親の家は自分が相続する」と考えていても、何から手をつければよいのか迷う人は少なくありません。
一人っ子でも、親の配偶者が存命なら、原則としてその配偶者も相続人になります。また、実家だけでなく、預貯金や借金を含めて確認しなければなりません。
この記事では、一人っ子が実家を相続するときの手続きと期限、相続後の家をどうするかという選択肢を順番に整理します。

この記事は次のような人におすすめ!
- 一人っ子が実家を相続するときの手続きと期限
- 一人で相続できる場合と、ほかの相続人がいる場合の違い
- 住む・売る・貸すなど、相続した実家の選択肢
一人っ子でも実家を一人で相続するとは限らない
一人っ子だからといって、必ず一人だけで実家を相続するわけではありません。亡くなった親の配偶者が存命なら、原則として配偶者も相続人になります。
この割合は、遺産を分ける話し合いの目安です。相続人全員が合意すれば、母が実家を相続し、子どもが預貯金を相続するなど、別の分け方もできます。
両親が亡くなっており、ほかに子どもがいなければ、一人っ子が単独で相続するのが一般的です。ただし、親に前の結婚でもうけた子や養子、認知した子がいる場合、その人も相続人になる可能性があります。
「相続人は自分だけ」と決めつけず、戸籍を確認して相続人を確定させましょう。
一人っ子が実家を相続する手続きの流れ
実家の相続では、家の名義変更だけをすれば終わるわけではありません。遺言書、相続人、財産と借金を確認したうえで、相続するかどうかを判断します。
1.遺言書がないか確認する
遺言書がある場合は、原則として、その内容に沿って相続手続きを進めます。自宅の金庫や机だけでなく、公証役場で作成された遺言や、法務局に預けられた遺言がないかも確認します。
自宅で封がされた遺言書を見つけても、その場で開封しないでください。遺言書の種類によっては、家庭裁判所で状態や内容を確認する「検認」という手続きが必要です。
2.戸籍を集めて相続人を確定する
亡くなった親の出生から死亡までの戸籍などを集め、相続人を確認します。相続登記や預貯金の解約でも、戸籍関係の書類を求められるのが一般的です。
転籍や結婚などがあると、複数の自治体から戸籍を取り寄せることがあります。戸籍を読み解くのが難しい場合は、司法書士などへ収集を依頼する方法もあります。
3.実家を含む財産と借金を調べる
相続の対象になるのは実家だけではありません。預貯金、株式、自動車などの財産に加え、住宅ローンやカードローン、未払い金などの借金も引き継ぐ可能性があります。
実家については、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書を確認します。登記事項証明書は、土地や建物の所有者、担保の有無などが記録された書類です。
- 土地と建物が誰の名義になっているか
- 親以外との共有になっていないか
- 住宅ローンなどの担保が残っていないか
- 敷地のすべてが相続の対象になっているか
- 固定資産税や管理費などの未払いがないか
家の中を片付けるときは、通帳、権利証、契約書、借入先からの郵便物などを捨てないようにしましょう。財産調査が終わる前に家具や家財を処分すると、相続放棄の判断に影響する場合もあります。
4.相続するか相続放棄するかを決める
財産と借金を確認したら、相続するかどうかを判断します。主な方法は、財産も借金も引き継ぐ「単純承認」、すべての相続を断る「相続放棄」、引き継いだ財産の範囲で借金を負担する「限定承認」です。
借金の有無が分からず3か月で判断できないときは、家庭裁判所へ期間の延長を申し立てられる場合があります。期限が迫っている場合は、司法書士や弁護士へ相談するとよいでしょう。
5.必要なら遺産分割協議を行う
相続人が一人だけなら、遺産を分ける話し合いである「遺産分割協議」は必要ありません。親の配偶者など、ほかにも相続人がいる場合は、誰がどの財産を引き継ぐかを話し合います。
合意した内容は、遺産分割協議書にまとめます。不動産の名義変更や預貯金の解約では、相続人全員の署名や実印、印鑑証明書などを求められることがあります。
実家を共有名義にすると、将来売るときや大規模な修繕をするときに、共有者との調整が必要になります。誰が使い、誰が費用を負担するのかまで考えて決めることが大切です。
6.実家の相続登記を申請する
相続登記とは、実家の土地と建物の名義を、亡くなった親から相続人へ変更する手続きです。登記簿に記載されている名義を確認し、実家を管轄する法務局へ申請します。
相続登記は義務化されており、原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく申請しなかった場合は、過料の対象になる可能性があります。
必要書類は、遺言書の有無や相続人の人数によって変わります。一般的には、戸籍関係の書類、住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書などを用意します。
相続した実家を売る予定でも、買主へ名義を移す前に相続登記が必要になります。登記が長年放置され、祖父母など古い名義のままになっている場合は、司法書士へ相談すると進めやすくなります。
7.相続税の申告が必要か確認する
相続税は、すべての相続で発生するわけではありません。遺産の合計額が基礎控除の範囲内なら、原則として相続税はかかりません。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。相続人が一人なら3,600万円、親の配偶者と一人っ子の2人なら4,200万円です。
相続税の申告と納付が必要な場合、期限は原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。不動産の相続税評価額は、一般的な売却価格とは計算方法が異なります。
特例を使うために申告が必要になる場合もあります。実家以外にも財産がある、土地の評価が難しい、申告の要否を判断できないといった場合は、税務署や税理士へ確認してください。
相続した実家をどうする?主な5つの選択肢
相続した実家の扱いは、家への思いだけでなく、立地、建物の状態、維持費、家族の生活を踏まえて考えます。急いで結論を出せない場合でも、期限を決めずに放置するのは避けたほうがよいでしょう。
1.自分や家族が住む
通勤や通学、生活環境に問題がなければ、自分や家族が住む方法があります。家賃を抑えられる可能性がありますが、古い家では修繕や耐震改修に費用がかかることもあります。
水回り、屋根、外壁、シロアリ被害などを確認し、必要な工事費を見積もってから判断するとよいでしょう。
2.実家を売却する
住む予定がなく、管理を続けるのが難しいなら、売却が有力な選択肢です。売却代金を得られ、売却後は固定資産税や日常的な管理の負担を減らせます。
家を売ったときに利益が出ると、所得税や住民税がかかる場合があります。親が購入したときの契約書や領収書は、税金の計算に使う可能性があるため、捨てずに保管してください。
売却を検討するなら、不動産会社の査定を受けると、現在の市場価格の目安が分かります。査定額だけでなく、売却方法、必要な修繕、家財を残したまま売れるかも確認すると比較しやすくなります。
3.賃貸住宅として貸す
将来自分が住む可能性があるなら、当面は貸す方法もあります。ただし、地域に賃貸需要がなければ、借り手が見つからないこともあります。
貸し出す前の修繕費、入居者募集の費用、管理会社への手数料、退去後の修繕なども考慮が必要です。家賃収入だけで判断せず、年間の支出を差し引いて検討しましょう。
4.空き家として一時的に管理する
親の死後すぐには気持ちの整理がつかず、売却や片付けを決められないこともあります。その場合は、一定期間だけ空き家として管理し、家族で考える時間を取る方法があります。
ただし、人が住まない家は傷みやすくなります。定期的な換気、通水、雨漏りの確認、庭木の手入れ、郵便物の整理などが必要です。火災保険についても、空き家になったことを保険会社へ伝えて補償内容を確認しましょう。
「1年以内に方向性を決める」など、見直す時期を決めておくと、長期間の放置を防ぎやすくなります。
5.建物を解体して土地を売る・活用する
建物の傷みが激しい場合は、解体して土地として売る方法があります。古い家がある状態より、買主を見つけやすくなる地域もあります。
一方で、解体費用がかかるうえ、建物を取り壊すと土地の固定資産税の負担が増える場合があります。家付きのまま売る場合と、解体してから売る場合の査定額を比べて判断しましょう。
売るか残すか迷ったときに確認したいこと
実家への思い入れが強いほど、金額だけで決めるのは難しいものです。それでも、判断を先送りする間は、固定資産税や保険料、修繕費、交通費などがかかります。
- 今後、自分や家族が住む可能性はあるか
- 年間の維持費はいくらかかるか
- 定期的に管理へ通える距離か
- 大きな修繕が必要な状態ではないか
- 売却した場合はいくらになりそうか
- 賃貸需要が見込める地域か
- 家財の片付けにどのくらい時間がかかるか
不動産査定を受けたからといって、必ず売却しなければならないわけではありません。実家の市場価格を把握すると、残すために負担できる費用との比較がしやすくなります。
家財の整理、売却、解体などを含めて実家全体を整理したい方は、実家じまいの費用・手順・片付け・売却をまとめた記事もあわせてご覧ください。
相談内容に合った専門家の選び方
実家の相続では、すべてを同じ専門家へ相談するとは限りません。困っている内容に合わせて相談先を選ぶと、話を進めやすくなります。
- 相続登記や戸籍の収集:司法書士
- 相続税や売却後の税金:税務署または税理士
- 相続人同士の争いや法的な交渉:弁護士
- 実家の査定や売却方法:不動産会社
- 空き家の管理や支援制度:実家がある自治体
何を相談すればよいか分からないときは、実家の登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、分かる範囲の財産一覧を用意しておくと、状況を説明しやすくなります。
一人っ子の実家相続に関するよくある質問
- Q親の兄弟姉妹から同意をもらう必要はありますか?
- A
亡くなった親に子どもがいる場合、通常、親の兄弟姉妹は相続人になりません。そのため、一人っ子が相続することについて同意をもらう必要はありません。
ただし、実家の土地や建物を親の兄弟姉妹と共有している場合は、売却や利用について調整が必要になることがあります。登記上の所有者を確認してください。
- Q実家に住宅ローンが残っていたらどうなりますか?
- A
住宅ローンも原則として相続の対象です。ただし、親が団体信用生命保険に加入していれば、保険金でローンが完済される場合があります。
返済を続ける前に、借入先の金融機関へ連絡し、ローン残高と保険の加入状況を確認しましょう。
- Q実家だけ相続放棄できますか?
- A
実家だけを選んで相続放棄することはできません。相続放棄をすると、原則として預貯金なども含め、すべての相続財産を受け取れなくなります。
相続放棄を考えている間は、実家の売却や家財の処分を進めないほうが安全です。行為の内容によっては、相続を承認したと判断される可能性があります。
- Q相続税を払う現金がない場合はどうすればよいですか?
- A
相続税は、原則として期限までに金銭で納めます。預貯金が少なく、実家の価値が大きい場合は、納税資金が不足することがあります。
実家の売却、相続した預貯金の利用、一定の条件を満たす場合の延納などを検討します。期限直前では選択肢が限られるため、税務署や税理士へ早めに確認するとよいでしょう。
- Q実家が祖父母の名義のままでも相続できますか?
- A
相続税は、原則として期限までに金銭で納めます。預貯金が少なく、実家の価値が大きい場合は、納税資金が不足することがあります。
相続手続きはできますが、祖父母から親、親から自分へという過去の相続関係も整理することになります。関係者が増え、必要な戸籍や書類が多くなる可能性があります。
名義が古いままの場合は、登記事項証明書を取得し、司法書士へ相談すると必要な手続きが分かりやすくなります。
まとめ
一人っ子でも、親の配偶者が存命なら、自分だけが相続人とは限りません。戸籍と遺言書を確認し、実家だけでなく預貯金や借金も含めて全体を把握することが出発点です。
相続放棄は原則3か月以内、相続税の申告と納付は必要な場合に原則10か月以内、相続登記は原則3年以内という期限があります。期限の短い手続きから確認してください。
相続した実家をどうするか迷っているなら、登記上の名義、建物の状態、年間の維持費を確認し、不動産査定で売却価格の目安を知ると判断しやすくなります。手続きや税金で分からない部分だけ、司法書士や税理士などへ相談する方法もあります。







